生命の発生と進化を扱う本シリーズでは、最初に3回シリーズでウイルスを取り上げます。その理由は、①生命を定義する際の最大の問題はウイルスが生物かどうかであること、②現在(2020年6月末)、世界は新型コロナウイルスの蔓延という100年に1度の大災害に見舞われつつあることです。
最初に「ヒトはなぜ夢を見るのか」に関する既存の仮説5つを紹介した後、筆者による新しい仮説を提案します。
日本神経科学会監修の「脳科学辞典」から、現時点で最も妥当と思われる夢の定義を引用します:
レム睡眠(Rapid Eye Movement Sleep)とは、急速眼球運動(以下、レム)を伴う睡眠をいいます。レム睡眠には以下の特徴があります:①レムが発生する。②ノンレム睡眠に続いて現れる。③脳波は覚醒中の脳波に匹敵する程度に活発である。④骨格筋の脱力の程度はノンレム睡眠中よりもはるかに高い。⑤呼吸数、心拍数、血圧が上昇し、不安定化する。⑥殆どの場合夢を見ている(※1)。
睡眠はノンレム睡眠から始まります。ノンレム睡眠とは「急速眼球運動」(レム、第61話参照)を伴わない睡眠を言います。客観的に観察容易なノンレム睡眠の例は通勤電車の中の居眠りです。電車の騒音も車掌のアナウンスも耳に入らず、下車駅を寝過ごすほど熟睡していても、体が倒れそうに傾くと自力で姿勢を元に戻そうとします。
我々は人生の約3分の1を眠って過ごします。睡眠の定義の1例は、「周期的に繰り返す、意識を喪失する生理的な状態」です(※1)。つまり我々は、限られた人生の時間の約3分の1を、意識を失った状態で過ごすのですが、それは何のためでしょうか?
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