表題の「目に見える進化」とは、研究者が生涯の間に確認可能な進化と定義しています。前回に引き続き今回も、人類が気づかない間に他の生物を進化させていた事例を3つ紹介します。
表題の「目に見える進化」とは、「研究者が生涯の間に確認可能な進化」と定義しています。第90話で紹介した「ダーウイン・フィンチの嘴の進化」は、遺伝子の変化を伴っておらず、数年後には消失しましたが、今回は突然変異と自然選択を伴う進化ですが、人類の活動が関係する例です。
本シリーズでは、表題の「目に見える進化」を「研究者が生涯の間に確認可能な進化」と定義しています。前回は細菌の進化を取り上げましたが、今回からは多細胞動物の進化の例を紹介します。
世論調査によれば、米国人の過半数が進化論を受け入れるようになったのはごく最近と言える2015年のことです。その前の2004年の調査では、まだ過半数の米国人が進化論を信じないと回答していました1)。彼らが進化論を信じない理由として挙げるのは、進化論が旧約聖書の内容と矛盾するという、宗教原理主義的な建前が多いのですが、進化には何百万年といった長年月が必要とされ、自分の目で進化が確認できないから、あるいは、進化は実験的に確認できないからという理由を挙げる人も多いようです。
(前回のあらすじ) 古澤満博士は生物が進化する性質と進化しない性質を併せ持つことに注目し、どのようなシステムであればそれが可能であるかを思考実験した。その結果、単細胞生物が分裂・増殖する際に、一方の娘細胞が必ず正確に複製された親の表現型を受け継ぎ、もう一方の娘細胞は必ず変異が付加されたゲノムを受け継ぐことを代々反復すれば、これらの相反する性質を併せ持つことが可能であることを見出した。彼はこのシステムを「元本保証の多様性創出」と名付け、生物界が、多細胞生物を含め、このシステムに従っていることを示した。
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